①顔の概論
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①顔の概論

2018年04月19日(木)10:09 AM

動画 概論①


<回生ブログのモットー>

⚫私たちは「顔」を知らない
私たちは自分の顔を知っているつもりでいます。
けれど内部構造を知りません。神経、血管がどう走行して、骨と筋肉がどう動いているのかを知りません(解剖学)。
胎児からどう発生して大人の顔になるのか(発生学)。どのような進化上の理由から、いまの日本人の顔になったのか(形態進化学)。
また標準的な顔の立体的比率はどうであるのか(モデリング解剖学)。
また骨折という異常が生じた時にどう変形するのか、それをどう治療するのか。正常とはどういう状態であるのか。
※解剖実習では大きく切り開いて、見やすく解剖を理解しますが、手術では小さく遠い創口から覗きこんで、解剖を理解することになります。これを「臨床解剖学」といいます。
こうした「顔」とはあらゆる切り口から紐解いてみると、宇宙のように奥が深く興味深いものです。
「骨」とはいわば宇宙の中心点のようなもので、そこに至る知識はすべてを網羅しています。

当サイトでは、患者さん、職員と一緒に、「顔」について、「解剖」について学んでいきたいと思っています。

 



●人の顔面は建物

・輪郭部とは
 大人や男性になると、骨の辺縁が発達して突出するため、顔面が大きく見えます。
 頬骨~頬骨アーチ、下顎骨角部、歯槽骨(上下顎骨)の3点が代表的です。この顔面の輪郭を骨削り(骨切り)することで
 顔を小さく見せる手術が骨切り(骨削り)術です。
 形成外科や耳鼻科の領域が基礎で、顔面骨骨折の再建手術が基礎となっています。

 組織は主に、皮膚、脂肪、筋、骨から成りますが、とくに硬さをもつ骨は、輪郭付近で分厚く発達しており、顔が大きく張り出した印象、ゴツい印象の原因となります。


・人の顔面は建物に似ている?
 人間の顔は建物、医師は建築家に例えられます。(家と違い、動くモーター付きです)
 骨は柱(鉄筋)です。(筋肉は骨と骨を結ぶモーターでしょうか)。筋を覆う膜が筋膜、骨の付着部が腱です。
 ※顔面の表情筋は例外的に、皮膚と骨をつないでいます。皮筋と呼ばれます。
 脂肪は、隙間を埋めるクッション材、断熱剤です。皮膚や粘膜は外壁や内壁でしょう。
 建物も人の顔面も、外から見ることしかできませんが、内部構造を知らなければ、症状の原因(内訳)を理解したり、大がかりな”基礎工事”は理解できません。
 外科医(建築家)は人体の設計図を持っており、建築作業も解体作業も現場で見ていますので、内部の仕組み(解剖)が良く理解できます。外からでも注意して観察したり触ったり、動かしたりすることで、
 外からでもある程度は内部構造を予測できます。
 専門家でなければ、内部構造は知りませんので、自分の顔(”マイホーム”)に不満点があって改築したくても、何が原因か、またどうしたら良いか分かりません。どの専門家に相談すれば良いのかすら分かりません。
 設計図(解剖の本)を見ても理解ができません。自分の顔の場合にはどこが問題点か見極めることができません(「診断」といいます)。
 建築現場(手術中)の写真や動画を見ても、「生々しいな」」「赤いのは血かな、黄色いのが脂肪かな」程度にしか分かりません。
 複雑な内容ですから、専門家に聞くと、その作業内容が理解できなかったり、効果の限界が理解できなかったり、その専門分野によって、微妙に提案内容が違ったりして、依頼主は混乱してきます。
  
 専門家(医師)と依頼主(患者さん)の理解度のギャップは、放置すると不満へとつながります。
 「こんなお洒落な感じの家にしたいんです」「それは技術的にも制限がありますし…まずは簡単なリフォームくらいからでいかがですか?」
 「それで私の理想通りになりますか?」「たぶん大丈夫でしょう。お値段は…」
 →「何かイメージと違いました。あんまり変わっていないというか…」「そりゃ、内装を替えただけですから、外観までは変わりませんよ」

 こんなやり取りは、専門家との間でしばしば行われていますが、これは技術的な「誤解」や「理解不足」が「不満」につながっていることが分かるでしょう。 

・当サイトの目的
 「小顔にしたくて、脂肪吸引もエラのボトックスもやりました。バッカルファットも取りました。でもあんまり変わっていないような…
  韓国の女優さんみたいに卵型の小顔になりませんか?」
 人の顔もマイホームとどこか似ていますね。  

 当サイトはそうした、専門家と患者さんとの情報のギャップ、イメージのギャップを埋めることを目的として作成されています。
 解剖や手術を分かりやすい形で解説していきます。

解剖学こそが技術と知識の根拠であり、それは患者さんも含めて全員が参加すべきである、というのが当院の基本理念です。


・血管と神経の「ヒモ」構造
 建物の壁の内部は骨によって仕切られた空間があり、さらに丈夫な膜(隔壁)によって、いくつかのスペースに区切られています。
 各スペースの多くは脂肪と筋が占めています。筋の深層(奥)にわずかな隙間があり、そこを血管・神経などのヒモ構造が、隔壁を貫きながら走行しています。

 また建物には排水管や電線といった機能上で重要なコードが束になって決まったルートを走行して、中心から家中へ張り巡らされています。
 神経は電線、動脈は上水管、静脈は下水管と思ってください。神経は電気の出入りを伝えます。血管は水(血液)を流して、栄養分や酸素を循環させます。
 ※神経も1束は一方通行で、「脳→末梢(out put)」の伝達が運動神経、「末梢→脳(input)」が感覚神経です。
  顔面で重要な神経は2つだけです。運動神経の顔面神経が(脳から出て)外耳道の下から出て、浅い所を走って、表情筋へ枝を伸ばしています。
  両側から正中(中心)へ向かって伸びるので、顔面神経麻痺では片側の表情筋が麻痺して弛緩します。
  一方、感覚神経は三叉(さんさ)神経といって、文字通り、脳から出たら3本に分かれて、頭蓋底(脳の床の骨)を貫いて、そのまま垂直に皮下まで立ち上がり、向きを変えて表面へ枝を伸ばして表面を覆います。
  上眼窩N、下眼窩N、オトガイ(下歯槽)Nの3本です。
 ※略号として、N=nerve(神経)、A=artery(動脈)、V=vein(静脈)とします。M=muscle(筋)です。 

 神経は河川のように、分岐するにつれ名称を変えます(中枢寄りの本幹を「上流」と呼ぶことにします)。三叉神経の3本目である下顎Nは、内側から下顎骨の中に入ると「下歯槽N」と名前を変えます。「歯槽骨」とは顎骨の先端にあたる
 一部で、歯を収めている槽(容器)となる骨です。下歯槽Nはオトガイ(顎先)にあるオトガイ孔から外側へでて、「オトガイN」と名前を変えて、顔面の下1/3へ広く枝を伸ばします。オトガイNが損傷を受けると、顔面の下1/3の感覚が鈍くなります。
 オトガイ神経は下顎骨の中(神経管)を貫通して走行するため、骨切り術では注意を要します。智歯(第3大臼歯)の抜歯やインプラント、下顎骨切り術では、すべてこの下歯槽Nを傷つけないことを優先します。術前検査として歯科レントゲンやCTを撮影したり、
 「この深さでは抜歯できません」、「これ以上は削れません」のように、操作に限界を与えるのもこの神経です。
 
・構造物と層(レイヤー)
 人間の顔はミルフィーユのように「層」構造になっています。地層のように、深くなるにつれ、微妙に色や硬さ(繊維の密度)が変化していくので、見慣れれば区別できるようになります。

 皮膚>皮下脂肪>膜の袋(脂肪や腺)>筋膜(浅深)、筋肉>骨膜、骨
 ※fat=脂肪、fasciaやSMAS≒筋膜
 深さは  深層⇔浅層  表面⇔奥  外表側⇔口腔側  のように表現します。
 下顎骨の内側には口腔という空洞があり、骨の内外に肉(組織)がついています。「骨の表側」=外表側、頬側、浅層といえます。「骨の裏側」=口腔側、深層といえます。
 

解剖学には2つあり、系統的に生物学的に解剖を説明する学問を「基礎解剖学」、これに対して外科医が実際の手術で必要とする、実際的な解剖学を「臨床解剖学」と言います。基礎解剖学では、自由な断面や区分で切りだしたり、進化や発生の時間軸を変えて説明したりと、様々なアプローチが可能です。一方で人間(患者)を生きたまま、なるべく小さい創から内部を作り替えるためには、視野や作業などの実際上の制限が伴います。


解剖学(特に臨床解剖)では、対象となる組織がどこの深さにあるのか、互いにどういった位置関係にあるのかを、詳細に知る必要があります。

興味のない人にとっては退屈な話かも知れませんが、手術は解剖学を避けて通れません。解剖学こそが技術と知識の根拠であり、それは患者さんも含めて全員が参加すべきである、というのが当院の基本理念です。
できる限り分かりやすく、図や動画を駆使してお伝えしますので、どうかお付き合いのほどを宜しくお願いします。

 


・外科医の目と患者さんの目 
 一般の人は、表面のシミをメイクで隠したり、シワに気付くと、身近な民間療法を試して解消しようとします。これは建物の例えでいえば、外壁のペンキの塗り直しです。効果は期待できないでしょう。
 そこで専門家に相談してみます。皮膚科はレーザーを使って、壁(皮膚)のシミを取ったり、皮下組織(脂肪など)にヒアルロン酸を充填したりして、表面の凹凸を微調整します。少しの効果を実感できます。観察力の鋭い人ならその変化に気づくでしょう。
 ヒアルロン酸注射を行う皮膚科医は、患者さんより少し下の層(皮下組織)を透視して見ることができます。「透視」とは比喩ですが、皮下組織までを良く扱うので、皮下の組織の厚みを判別できますし、「○ccのヒアルロン酸にて改善できる」といった定量的な判断まで可能でしょう。
 外科であれば、より深部の層まで判断したり操作したりできます。切開手術の症例が多い外科医は、切り開いて内部を観察して作業しますので、筋膜や神経、血管まで見通すことができます。
 骨とは「最も深い層」ですから、すべての解剖を知り得る立場にあります。骨切り医にとっては、内部や顔面骨を透視できるような観察眼があります。
 
 人にとっての「知らない領域」とは白地図です。日本から出たことがない人にとっては、日本の外側は真っ白なイメージでしょう。建物も外観だけでしか判断できない一般の人にとって、その内部構造は白地図です。専門家(建築家)にとっては、すべての内部構造を正確にmm単位で把握しています。
 解剖学とは、「内部を見える化する知識」であり、「白地図」に書きこんでいく作業に当たります。このサイトでは、患者さんとともに楽しく解剖を学んでいただければと思います。

 解剖を知る上でのポイントとは以下のようなものです。
 ・平面ではなく立体で考える、あるいは「立体から断面を」、「断面の集合から立体」を自由にイメージする
 ・各部位での層(レイヤー)構造を理解する
 ・様々な方向での断面にて層を確認する
 ・ヒモ構造(A,V,N)の走行を知る
 ・「神様視点」(俯瞰、透視)と「小人視点」(剥離術野、骨表面に降り立った視野での凹凸)の2方向から観察する

 

●当サイトの目的
当院は解剖学や顔に関する学問の教育研究を第一義としております。現在、美容医療に関わる様々な社会問題が顕在化していますが、これは患者さん、医療関係者の両者の「情報格差」がその一因であると当院は考えます。
手術の「before/afterのイメージ」が患者さんと医院とでギャップがある場合、これを解消しなければ、「思っていた結果と違う」というトラブルを招きます。このギャップは解剖学の知識で埋め合わせるしかありません。

解剖学は非常に複雑で、「患者には理解不可能である」と多くの医師が考えています。
「情報の正確さ」よりも、「何となく納得すること」が優先ではないかと考えています。患者さんも正確さより納得を求める向きがあります。

これは「正確さよりも説得力」を求め、「複雑な真実よりも、簡潔な方便」を求める方向です。情報を曲解することは誤解のもとであり、患者と医院、双方にとって不幸な負の連鎖です。
患者さん、サイト作成者および医師とでは、立場の違いや情報量(知識と経験)の違いから、この向きに拍車をかけて折り合いを求めます。

当サイトはこれを良しとしません。情報格差を解剖学で埋め合わせることは容易ではありませんが、その努力には大いに意義があります。

当サイトはそれを実現するための解剖学の解説サイトです。学問であり医療ですから、先達の努力によって得られた知見の上に成り立っています。当サイトでは多くの画像や動画について、既存の情報媒体を参考にしておりますが、出典を明らかにしております。
※原典に敬意を払い、情報の曲解のないよう努めておりますが、より正確さを原典に求めるようにお願いいたします。

先達の努力と当サイトの読者の意欲に、敬意と感謝を表します。

 

 

 

 



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