⑦CGモデリング
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⑦CGモデリング

2018年04月20日(金)2:54 PM

●CGモデリング

顔は医療だけのものではありません。クリエイターやロボットの世界でも、人間の顔の再現とは重大なテーマであり、「いかに顔面をつくる」かが、様々なアプローチから研究されています。
バーチャルな「人形」ですから、解剖は問うていません。人の顔面の造形を再現するという努力であり、ここでは顔の「モデリング」と総称しましょう。

モデリングは顔面の大まかな造形(比率、均整)を理解する上で有用です。また完全に解剖学的に再現されていないとはいえ、表情や動きをリアルに見せるためには、ある程度の解剖学的な正しさも必要となります。

まずは動きのない顔面の作り方を見て、顔の造形を観察します。


●CGでの頭部顔面モデリング

ポリゴン(多面体)を微調整して顔の曲面を再現していく手法です。木を彫刻刀で掘りだす動きに似ています。
後半の細部の完成で、ぐっとリアルになりますからそちらに目を奪われるかと思いますが、当サイトのテーマとしては、前半の大まかな造形部分が核心となります。
頭蓋の球体に下顎を延長させて顔面骨格を再現し、次に眼球、外鼻、耳、口という特徴点を追加していく様子が分かります。皮膚などのテクスチャーはほんの仕上げに過ぎません。
また微妙な凹凸を表現する際に、照明(ライティング)が重要な要素であることが分かります。

 

●照明と重力
昼間に明るい照明の下でご自分の顔を観察してください。全方向からの十分な照明のもとでは陰影(コントラスト)が弱いため、ほうれい線などのシワが浅く見えます。
次に洗面台など、上からの暗い照明の下で観察してください。上からの照明では、わずかなタルミの凹凸による影が濃く表現されます。このため体感的には5歳ほど若返ってみえます。
広告などに見る若返り効果を謳う映像の多くでは、この照明テクニックを利用してことが分かるでしょう。
これを応用すると、2次元の画像でもある程度は3次元を評価することができます。それは照明の明るさ・反射を「等高線」のように辿って観察することです。
額から鼻スジにかけての「Tゾーン」は、この「照明の照り具合」にて診断が可能です。
眉丘が突出して額が凸凹に見える→ 額に注入物かインプラントを加えて、丸くしましょう(眉丘の骨削りは困難です)
鼻根(両目の中間の鼻スジ)が低く、陰ができている →注入物かインプラントを加えて、鼻スジを整えましょう 

※ちなみに重力も照明と同様に重要な要素(パラメーター)です。手鏡を少し離して持ち、鏡を見たまま顔を天井方向へ向けて上げていきましょう(手鏡も一緒に移動します)。
すると5歳ほど若がえって見えることが分かりますか。これは照明効果と重力効果の2つによる変化です。天井を向くことで照明が顔の正面から当たります(照明効果)。
同時に顔面が重力に垂直となることで、重力の効果が打ち消されて、タルミによる下垂がなくなります(重力効果)。


●顔の彫刻

そろそろ顔を「物体」として、「曲面の集合体」として見えてきたのではないでしょうか。
こうした塑像では、不足な部位では肉をつけ足して、過剰な部位では肉を削ぎ落とすことで、徐々に人の顔の曲面へと近づけていきます。
これはまさに「現状に足し引きして理想(黄金比)に近づける」という美容外科のアプローチと同様です。黄金比を脳内に正確に再現できれば、自分や他者の顔を観察して、どの部位が何mm過剰であるか、あるいは不足であるかが判断できると思います。


●CGによる顔の表現

ハリウッド映画などでは、人間がモンスターに変わっていく姿や、人間そっくりの滑らかな表情・動きをするアニメーションを見たことがあるでしょう。
「イメージペースト」や「ライトステージ」といった映像処理技術によって、モデルとなる役者の動きをリアルに再現しています。
・ライトステージ

これらは無数のカメラ、照明によって無数の角度からの映像をストックすることで、それらの組み合わせから自由な動きを合成するという手法です。
造形の復元、照明の復元、反射率の復元といった複数のパラメーターをコンピューターで計算し、リアルな画像を自由に合成します。
CG技術を通して、顔面という立体面の撮像、認識、再構築といった過程が理解できます。現在ではまだ実現されていませんが、ホログラムのような3次元出力方法が開発されれば、動画のように故人と顔を合わせて会話することもできるかも知れません。

 

現在のCGでは、外観的(表面的)なリアルさの追求が主流で、ポリゴンの発想に基づいています。「解剖」つまり内部構造から設計されている訳ではありません。
しかしこのまま計算速度とその手法が向上すれば、近い将来にはすべての顔面の解剖(骨・筋)をプログラムして、それを自由に動かせるようになるかも知れません。
※彫刻的な顔の製作手法ではなく、解剖から層(レイヤー)構造に準じて組み上げる手法を区別して、「解剖学的モデリング」と呼ぶことにしましょう。これは章を改めて、説明します。


●「Saya」フルCGによるバーチャルアイドル

これはモデルが存在しない、フルCGによる人間の再現CGです。

モデリングされた人間は、大抵が「美人」に見えますが、これは美人の基準の1つ「均整」の条件を満たしているからです。
均整=平均のことで、多くの人間の「平均顔」は美人になるという原則があります。かつて警察捜査にて、犯罪者の平均顔を合成(モンタージュ)したところ、美男美女になったということです。
※章を改めて「各国の平均顔」を紹介します。各人種の特徴を備えていますが、みなそれぞれに美人です。
これらは「均整が取れている」と言われます。骨格や目鼻の理想的な比率を「黄金比」と言いますが、平均顔は黄金比に類似します。

※平均顔=黄金比は整った顔立ちであり、美人とされます。ただし少し地味と言いますか、物足りなさも感じます。
そこで更に美の基準に沿ってこれを強調した顔である「魅力強調顔」も美人の新たな基準とすることもできます。
いわゆる「お人形さん」や「アニメ顔」といった、デフォルメされた顔を言います。黄金比に比べてより目を大きく、より下顎骨を小さくします。場合によっては鼻を高くします。

 

これらが「リアル」「自然」に見える理由は、「矛盾がない」からです。
筋肉や関節はこう動く、といった解剖学的に矛盾がないこと。この照明の条件ではこう影ができて、この湿度の肌質ではこう反射する、という光学的な矛盾がないこと。動きに剛性の矛盾がないこと。


また一方で、次の動画の顔についてはどう思いますか。
●「リアルバービードール」ダコタローズ

これは「リアルバービードール」と言われたアメリカのモデルさんです。実在の人間でありながら、バービー人形のように均整のとれた顔をしています。
先ほどのsayaとの違いは何でしょうか。どちらも「自然さ」「矛盾のなさ」においては、人間には判別できないほどの小さな違いでしょう。

美人顔とは「平均顔」であり、「黄金比」であり、「計算で作り出せる」ものと言えるでしょう。
しかしそれが「真に自然か」と言われると、違和感を感じるのは何故でしょう。人間そっくりの外見と解剖と、人工知能を備えたアンドロイドを、我々はどう感じるでしょうか。
ましてやそれが自分そっくりではどうでしょう。

それは顔を形づくる内容や過程に関する、心理的な抵抗感です。すなわち「受け手」の価値観(フィルター)を通してしか、美人は評価できないのです。
※これは「一番に美人と思う芸能人は誰か」が人によって異なることからも分かります。「黄金比」は目安であって、絶対的な基準ではありません。

また外観がそっくりでも、切っても赤い血がでない合成繊維では「自然」とは感じないかも知れません。
生まれる過程も、お母さんの体内で発生から生じて、家庭の中で成長して大人の顔になることで、「自然」として受け入れられます。

美容整形による人工美が「不自然」と感じられるのも、こうした「内容物」あるいは「過程」が通常と異なるからでしょう。

※アンドロイドに抵抗感を感じる理由の一つには、「人間の存在意義」が脅かされることもあるでしょう。自分以上に美しく、自分以上に能力が高い存在は、自分にとって「脅威」です。自分が今の立場を追いやられるリスクがあるからです。
 これはアンドイドに限った話ではありません。自分より人気者の転校生が現れた、より可愛い弟妹が生まれて可愛がられている、そうした存在が現れると、脅威・嫉妬・不安を感じることは当然の心理です。

このように人間の顔は、「受け手の心理」というフィルターを通してしか「美人」を論じられません。「自然な美人顔」とは、「完全無欠の顔」よりも、適度に黄金比から外れた、「隙のある顔」なのかも知れません。
※ただ、「適度な外し値」は計算可能ですので、将来的には自然な美人も実現できるでしょう。
有名な映画監督の言葉に次の言葉があります。
本当に「リアル」なのは、「現実そのもの」ではない、皆が「現実っぽい」と感じる人工物である、というのです。「自然さ」や「リアルさ」には、単なる黄金比に加えて、そこに見る人の心理が揺れ動くだけの「あそび」の部分が必要なのかも知れません。


●「顔」は永遠のテーマ
 物心二元論では、人間は「心」である知能と「物体」である顔とから成り立ちます。
近い将来、AI(人工知能)は急速に学習を経て、人間以上の超知能が実現するでしょう。人工物にとって「顔」などという容れ物は無用の産物のようですが、それでもなお「人の顔形」が使われていると思うのです。
人間はネットにつながり、人工組織をつけて、知能と外見を自由にカスタマイズしていることでしょう。
人工物(アンドロイド)も、人間社会に溶け込みやすいよう、人の顔をもち、計算された人間性を発揮していることでしょう。 これはそう遠くない未来の話で、「顔」とは何であるのか、あらゆる技術者が向き合う必要のある、永遠のテーマだと思います。

※この世のすべての個体は「適者生存」という原則に支配されています。人間が進化の途上で適応した結果として、いまの頭部顔面を持ち、生態系の頂点という立場に至りました。人間も人工物(機械)も美の基準も、目まぐるしく変化する環境に適応したものだけが後世に残ることでしょう。

 

 

■最新の顔面CG「ライトステージ」
人は言語とともに、「顔面・表情」をつかってコミ二ケーションをしますので、顔については微細な変化であっても読み取ります。
CGでは人の顔面をいかに「正確」に「自然」に再現するかを追求しますが、すこしでも正確さが欠けると、不自然ということになります。
一流のCGクリエイターとは、解剖学者であることも求められます。解剖的に正しくないと、それは「不自然さ」につながるからです。
ライトステージとは、立体形状だけをトレースしていた「モーションキャプチャー」に、更に情報を追加した新世代のCG技術です。

顔面を作るうえで、まず皮膚とその下(皮下)に分解しましょう。皮下は運動性をもつ「軟部組織」と不動である「骨格組織」から成ります。

皮膚、表面的な部分を「テクスチャー」といいます。色味、照り、小皺などがそれにあたります。表情筋の停止部であり、表情筋の収縮に応じて、皮のヒダを生じます。
皮膚を剥いだすぐ下には「表情筋」が様々な方向に錯綜して、1枚の厚みを形成しています。表情筋はその下の骨格を土台として、これと皮膚とをつないでいます。
表情筋の周囲には脂肪や筋膜といった組織が潤滑として取り巻いています。
その下にある土台となるのが骨格(頭蓋骨)です。

CGでは「解剖学的に正しい」ことが求められます。そのために表情筋を簡略化したモデルを使用しています。
その上に皺やヒダを作る皮膚をのせて、そこに色や反射(照り)、湿度などを塗装してできあがるのです。

CG用語では「レイヤー(層構造)」という概念が重要ですが、これは解剖学的にも、全く同様です。


こちらはアメリカのプレゼンテーション番組「TED」の顔面に関する講義です。

●TED「顔面再建の話」

頭蓋顔面骨の奇形や腫瘍を除去し、顔面を再建する外科医の講義です。

●TED「顔面CGのライトステージ」

●TED「老化顔面のCG」

自然な顔面をCGにて再現する、CGクリエイターの講義です。

※パスワード:1231



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