症例5 エラ削り(下顎角osteotomy)~オトガイ削り、下顎骨全体削り
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症例5 エラ削り(下顎角osteotomy)~オトガイ削り、下顎骨全体削り

2018年03月21日(水)8:12 PM
エラ削り(下顎角osteotomy)~オトガイ削り、下顎骨全体削り (2017.1.8) IMG_9376.jpg ●アセスメント ・オトガイ骨、オトガイ筋が発達しているが、本人はオトガイの形状は気に入っている、矯正不要とのこと ・輪郭をより小さく見せたい、エラ張り顔が気になるとのこと。エラ削りを希望された。 ●手術方針 口腔内(臼歯側)アプローチにて、エラ削り(角部)を中心に骨切り。 口腔内(オトガイ側)アプローチにて、オトガイ側にかけての全体をトリミング
●術中所見 ※左側下顎骨に対し、口腔内(臼歯部)アプローチから剥離、切削していく。 IMG_0373.jpg 口腔内(臼歯部)粘膜の切開線にピオクタニンでマーキング。 IMG_0375.jpg 15番メスで粘膜切開し、モノポーラーで頬筋を切開して、メッツェンに持ち替えて鈍的に開きながら、鋏の尖端に下顎骨の外斜線あたりの硬さを触れる。尖端を押し当てつつ、四方へ骨膜をめくるように露出する。奥に骨面がわずかに見えている。 IMG_0378.jpg 奥が暗いが、骨切りのような奥行きのある手術では、「照明の軸」と「視線軸」が必ずしも一致しないため、術者の視野も術中写真でも、鮮明にとらえることは困難である。 ※術者はヘッドライトがあるため照明は視線と一致することが多いが、さらにカメラの軸をこれに一致させることは困難なため、術中写真の撮影にはかなり高度な技術を要する。 ※無影灯や患者頭位を変える、術者立ち位置を変える、オペ台を傾斜させるなどして、視野の改善をはかる ※これらの軸の混線に加えて、さらにストライカーハンドピースが挿入されて、わずかな視野を奪うため、術者およびナースは、すこしでも良い展開を追及し、また「見えていない」骨の輪郭を、「見えている」かのように、立体イメージを脳内に再構築しながらオペを行っていることになる。 うまく照明が当たると、白く反射する骨面が見える。 ラスパトリウムにてさらに骨膜下剥離を角部へ向かって行う。 IMG_0379.jpg 剥離が角部~下縁に達し、辺縁の硬い咬筋停止部の付着繊維を外していくと、スペースが生まれてリトラクターがかかる。 画像はスプーンリトラクターをかけた様子である。 IMG_0380.jpg 角部を露出してから、その内外へ向かって繊維をときに切離し、ときに引き延ばししながら剥離を延長させていく。 まだ骨縁の内側(下顎窩側)の付着部に対し、スリングストリッパーを用いてコジるような動きで稜線上3mm幅程度の範囲を可及的に剥離を行う。 ある程度の剥離が得られてポケットが拡大すると、展開の制限が解除され、視野が良くなる(骨面が見えやすくなる)。
IMG_0381.jpg エラ削りとは、エラ(下顎角部)をブーメラン形に切り落とす訳だが、その切り落としラインに溝を掘っておき、ガイドランとする。 画像はラウンドバーにて皮質骨の厚みを広く面で切削して、この切り落としラインを残して削りこんでいる。 IMG_0382.jpg 分かりにくいが、右手前の白い部分が削り込んだ骨面の床であり、その奥に削り残された角部が段差となっている。 段差の断面層は赤暗く見える髄質である。 IMG_0384.jpg ガイドラインにそって、オシレーティング・ソーを挿入して、往復運動のノコにて、骨に垂直に骨切りをしている様子。 IMG_0385.jpg 後方(関節突起側)へ骨切りを進める。皮質骨のガイドラインを十分に薄くtaperingさせておかないと、骨切りラインが下縁へなかなか抜けず、下縁に平行に進んでしまい、予想外に切り取り骨片が大きくなってしまう結果となる。 ※悪い場合には関節突起や内板までゴッソリと取れてしまう場合もある。いわゆるmalfracture(不良骨折)を伴っており、「削りすぎてしまった例」としてネットなどで目にする症例には、このケースが含まれおる。 削ったり切り落とした骨を再建することは容易ではない。骨片を移植しても筋肉、髄質からの血行は失われており、移植骨は萎縮することが多い。 ※インプラントによる再建が一般的だが、辺縁はズレやすく、可及的広範囲に剥離展開して、骨孔などに絹糸固定などで可及的に固定をはかるとベターであろう。ただしズレる可能性はあり、オトガイ神経による操作の制限もあるため、術全には予測がつきにくいものである。 ※フィラー(ヒアルロン酸)による修正 やはり辺縁なので多少、ズレたりする可能性はある。永続的ではないが簡易であり、インプラント術のシミュレーションや代替手段としてありうる。 IMG_0386.jpg オシレーティングにて前方(オトガイ側)へ骨切りを進めている こちらも精密なガイドラインの処理が不十分だと、切り落とした際に「角」が残ってしまう。 滑らかなカーブを実現するために、オトガイ側からのアプローチにて2方向から慣らすか、レシプロの骨ヤスリなどで、より奥まで届くアタッチメントにて、凹凸や突出を慣らしていく。 IMG_0389.jpg 骨切り線が完成して突き抜けた。骨片は下顎骨から完全に切り離され、繊維(外側翼突筋停止部)だけで蝶つがいのように連結しており、グラグラの状態である。断面が傾いて、視線に直角の向きにrotationしたため、断面(赤暗い髄質層)が見えやすくなっている。 IMG_0391.jpg 曲がりペアンにて骨片を把持し、引き出しているところ。繊維が密であり、骨切りや繊維の剥離が不十分であればmalfractureの原因となる。繊維を鋏で時に鋭的に時に鈍的に、あるいは骨ノミのタップ振動を加えたりして、抵抗する繊維をほぐしていくと、徐々に骨片は核出されていく。 IMG_0392.jpg IMG_0395_20180314133029452.jpg 核出されたエラ部(下顎角部) IMG_0394_201803141330275a8.jpg 骨切りされた後の角部の様子。
IMG_0396.jpg オトガイ側(前歯部)を粘膜切開して、前方から下顎骨縁へアプローチしている。 下顎骨縁(稜線)が露出している。オトガイ側からのアプローチでは、骨縁に平行にストライカーが当たるため、骨縁を慣らして仕上げるのに適している。 IMG_0397.jpg オトガイ神経の牽引に注意して剥離を進め、スプーンリトラクターにて骨縁を露出している。 IMG_0399.jpg 切り落とした前方(オトガイ側)の端が突出して「角」に残っているので、これを慣らして滑らかにする。
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●麻酔記録 ①患者情報 身長 162 cm、体重 61kg 基礎疾患  特記すべきことなし 血圧  110/80 術式 エラ削り(下顎角osteotomy)~オトガイ削り、下顎骨全体削り ASA(全身リスク) : 1 ②麻酔法  全身麻酔、経鼻挿管 Mallanpati score 1 チューブ頭頂部固定 GOS(吸入麻酔sevoflurane) 胃管(18Fr. 60cm)、尿管を挿入した。 ③導入 10:40 プロポフォール 120mg エスラックス 50mg ドロレプタン 1.0cc  ※PONV予防 セファゾリン 1000mg×2 やや小顎で肉厚のため、Mc Glass(ブレード#3)にて喉頭展開し挿管。 聴診にて片肺挿管はrule out。換気量440cc、気道内圧上限20(cmH2O)。sevo2.0%にて安定。 やや腹部脂肪多く、腹圧が高いのでPEEP4(cmH2O)を加えた。 脱水強かったため、血漿代用液(ヘスパンダー)にて1000mlを早めに負荷してvolme調整。 循環はsBP100前後にて安定。 ④術中vital管理 ネオシネジン 0.1mg×3  適宜 エスラックス +1.0mg   120分おき追加 アドナ 1A 奥の剥離時にやや血圧上昇を見て、機会的に降圧(ペルジピン 0.2mg)した。 ⑤抜管  15:15 IN(輸液):  4000cc OUT(尿量): 1500cc 手術時間: 4:30 出血量:  70cc ⑥術後管理 吸入麻酔OFFとして10分で十分な自発呼吸が戻り、数分後に抜管。 Aldred score9。 覚醒まで 15分程度。 PONV(嘔気)に対し プリンペラン1A、ドロレプタン0.5 術後鎮痛に対し アセリオ  1000mg ボルタレン坐薬 50mg ロキソプロフェン 60mg 不安のためか疼痛の訴えが強かったが、気分が落ちつくと「問題ない」とのこと。 圧迫、臥床安静にて経過観察した。vitalは安定。 16:50 飲水 17:50 トイレ歩行 追加処方 疼痛に対し ロキソプロフェン60mg 不眠に対しマイスリー 5mg 術後血圧 110/80 入院:1泊、近隣1泊の後に、テープ固定を調整して、新幹線にてご帰宅された。


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