顔の進化①
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顔の進化①

2018年05月23日(水)10:43 AM

■顔とは

顔とは何でしょう。ヒトだけでなく、哺乳類にも顔はあります。魚類にも顔らしき部分がありますし、実は「ホヤ」にも目鼻口など、顔の原型らしきものはあります。

植物には顔がありません。どうやら動物が進化の過程で手に入れた形態のようです。

 


顔を分解すると、以下の5パーツに分けられます。

①口腔

②感覚器(鼻腔、眼、耳)

③これらを容れる顔面頭蓋の空洞スペース(口腔、眼窩、鼻腔、上顎洞)

 あるいは咀嚼系の骨格(顎骨、歯)

④咀嚼筋

⑤額(脳頭蓋の突出)

 

※下記は腫瘍切除のため、左半顔の眼球・頬骨・上顎骨(歯)を切除した人の顔です。

遮るものがなく、鼻腔や口腔といった空洞スペースが露出しています。顔面とはこのように空洞がだらけの構造をしています。

 


ここで、ブリタニカ百科事典を見てみましょう。非常に簡潔に「顔」が説明されています。

顔が「宇宙」のごとき深みをもっていることが分かるでしょう。

 

●「顔」(出典:フリタニカ国際百科事典)

頭部の前面に位置し,消化器の発端である口を中心として,視覚,嗅覚,味覚,聴覚の諸感覚器が集中している部分。解剖学的には,顔面頭蓋,脳頭蓋に分けられる頭部のうち,顔面頭蓋にあたる部分で,咀嚼器を主体として,上記感覚器のほか,呼吸器の一つである鼻部から成り,さらに表面には表情筋が発達し,ひげ,眉毛がみられる。

※頭蓋(とうがい)は、脳を入れる脳頭蓋(神経頭蓋)と、顔の土台を構成する顔面頭蓋(内臓頭蓋)からなります。脳頭蓋は脳と視覚器、平衡聴覚器を収めています。顔面頭蓋は、上顎骨、下顎骨、口蓋骨、頬骨、舌骨で構成され、顔面・鼻腔・口腔をつくっています。両方の境を明瞭に決めることはできないが、脳頭蓋の前下方に顔面頭蓋が位置します。

一般的には頭髪部を除いた,額から下顎底にいたる左右の耳介の間の部分を顔と呼ぶが,解剖学的には額は顔に入らない。
霊長類から人類への一連の進化にあたって,咀嚼器は退縮し,一方,脳,特に前頭部は増大するため,他の動物に比べてもヒトの顔は独特なものになる。

ヒトの口は小さく,一方,唇や頬が形成される。

※動物の口は前後に長く突出しており、「突顎」といいます。これに対し、ヒトの口元は引っ込んで、スッキリとしていますが、これを「直顎」といいます。
「頬」が顔の要素として加わるのは、哺乳類移行です。人は歯槽骨を覆い隠すように、皮膚と筋肉からなる「頬」がありますので、ワニのように口が後方まで裂けて、大きく開口することはできません。「頬」を刃物で切り開けば、ワニのような「口裂け女」になります。

※また「唇」はサルより移行に顔に加わったもので、ヒトのみが持っています。二足歩行を始めると、陰部が背面から見えなくなってしまったため、セックスアピールとして、陰唇の代わりに唇ができたと言われます。

以下はヒトのパーツをそのまま動物に配置したものですが、違和感がありますね。ヒトの目・鼻・唇の形がいかにヒト固有のものであるかが分かります。横長の眼裂と大きな白目(結膜)や頬、唇はヒト固有の形態です。

 

類人猿では犬歯は著大で牙となっているが,ヒトではほかの歯と大きさがあまり変らない。咀嚼力もヒトでは著しく弱くなっており,この結果としてヒトでは顎部の前突すなわち突顎の程度が著しく低い。

※高度な動物では、咀嚼の効率化のために、形の異なる複雑な歯をもっています。前歯(切歯)と犬歯は切り裂き、臼歯は砕いてすり潰します。犬歯はまた、威嚇にも使われます。ヒトは調理と加工の技術を持ったため、上部な歯が不要となり、威嚇も武器で行うようになったため、顎骨や歯は退化しました。

※ヒトはあらゆる道具によって、各器官の能力を拡張・増大できます。
目の拡張 → 眼鏡、双眼鏡、テレビ
耳の拡張 → 補聴器、電話
脳の拡張 → 文字記録(本)、PC、人工知能
歯と顎の拡張 → 石器・鉄器(包丁)、火の使用
爪と腕力の拡張 → 石器・鉄器(武器)、銃、エンジン、工作機械

あるいはあらゆる道具は、動物としてのヒトのある一部分の能力に帰することができる(それを拡張するための仕組みである)、とも言えるでしょう。


しかし,鼻腔の部分の大きさは全体としてあまり変らない。両眼は顔の前方に並ぶため,立体視に適している。
※顎と歯は不要となり、退化して引っ込みましたが、鼻腔はなおも必要性があったため、突出したまま中顔面に取り残されました。鼻腔は肺を守るために加湿・加温する役割を持ちますが、ヒトが寒冷地に適応する際に大きい鼻腔が必要がったのです。


耳介はヒトでは動かない。額は英知の象徴として広くふくらんでいる。

※「額」もヒト特有です。脳は本来、顔面のはるか後方にあり、咀嚼の衝撃から守られる構造になっていました。サルなどの「額らしき部分」は斜面で平坦で小さいものです。ヒトでは脳があらゆる方向にスペースを求めて巨大化し、顔面にせり出すまでになったため、前頭部が突出して「額」となりました。「知能の証」という意味においても、ヒトの顔を象徴する部分です。

 

男の顔は大きく,ごつごつしており,一方女の顔のつくりはやさしく,丸みが著しい。ひげの有無が男女の違いを最も顕著に表わす。

※男女を見分ける特徴は、毛の分布と骨格的な違いです。男性では髭が多く前頭部は比較的、後退しており、全体に毛の密度が濃く太いです。また骨格では男性は頬骨、下顎骨、眉丘、鼻骨がより突出しており(鼻根は陥凹)、シルエットは直線的でゴツゴツしています。毛も骨(輪郭)も、男性ホルモンの影響を受けて発達します。

※GID(性同一性障害)でMtoF(男性から女性へ)の顔の手術をする場合、この点をつくり変えていきます。

①毛の女性化 →額は植毛によって小さく、他は脱毛 

②骨格の女性化 →下顎骨削り、頬骨削り (眉丘は眼窩上Nのため削りにくい)


子供の顔では,特に下顎部が小さい。

※目と脳は神経系の中枢なので、母体内である程度、完成しています。対して顔面骨や歯、毛は出産以降に成長します。顔面骨が発達する前の小児の顔は、相対的に眼と額が大きく、顎が小さいため可愛らしく見えます。

これは類人猿に対するヒトと同様の関係にあります。

ヒトはより未熟な状態で生まれ、成熟してもなお、未熟な姿形をしています。子供の姿のまま成熟し生殖活動をするものを「幼形成熟」といいますが、ヒトは進化の過程で幼形成熟をしたと言われます。

 

※またアジア人と他人種でも、一部分に同様の関係が見られます。

アジア人(モンゴロイド)はよりオトガイや外鼻の突出が未発達のため、童顔に見えます。

 

顔は個体変異の最も顕著な部分であるため,日常の個人識別はおおむね,顔で行われ,人種間の差異もこの部分が最も著しい。人類学ではそのために種々の測定法や示数が考案されている。顔の長さを顔高というが,形態学顔高 (鼻根~頤間距離) と相貌学顔高 (頭髪の生えぎわ正中点~頤間距離) の2種があり,顔幅は左右の頬骨弓間の距離で表わす。

※大きく3つの人種があります。モンゴロイド(黒人)、コ―カソード(白人)、モンゴロイド(アジア人)です。肌の色や骨格、毛などの特徴が異なります。

アフリカで誕生した人類は何万年もかけて、何回も各大陸へ進出していきました。人種の違いは人類進出(2~4万年前)の時期に、何万年もかけて各地域に適応した結果です。

アフリカ大陸にとどまった集団は、誕生と同じ環境なので、比較的、初期の姿を残しています。ヨーロッパに進出した集団は高緯度で寒冷地に適応した結果、ずんぐりして大柄で、鼻が高く、色素の薄い顔になりました。東北アジアやその先のアメリカ大陸へ進出した集団は、これとは異なる方法で寒冷地適応をした結果、厚ぼったい一重、突出した頬骨と平坦な顔、小さいオトガイなどを獲得しました。

 

このように似た環境の下でも、進化は偶然性によるところが大きいため、同一の結果になるとは限りません。またヒトは寒冷などの環境に適応する際、身体を変化させる以外にも、もっと効率よく道具にて適応することも可能です。このことも進化の方法の地域による違いの一因となります。

 

白人は顔幅が狭く顔の彫りが深いが,日本人などモンゴロイドの顔は幅広く,平面的である。黒人の顔は,一般に突顎の程度が他人種に比べて強い。

この突出程度を表わすものに,顔面角がある。

 

※過去1~4万年は拡散と適応、分化の時代でしたが、近代に人類の移動速度は急速になり、混血の時代となりました。あらゆる人種の血が混ざりあい、似通った「混血顔」が増えていくでしょう。<平均顔=美人>の法則がありますから、より美人とされる人が増えるでしょう。

日本人は戦後以降、食事の軟食化、栄養状態の改善や住環境の変化によって、急速に変化しました。身長は高くなり、顎骨は退縮しました。

今後は、混血がすすみ、美容整形技術が向上すると、より「美人」とされる顔が増えていくことが予想されます。

 

 

顔は顔面筋のつくる表情によって,また著しく修飾される。表情は,心理的,社会的なものであり,喜怒哀楽や,意志,教養の程度をもしばしば克明に表わす。

※人類は、表情筋を高度に発達させた類人猿です。牙も爪も強い筋力もなかった人類は、集団生活とコミュ二ケーションによってこれを補い、生態系の頂点に立ちました。その勢いはとどまることなく、文明を築き、テクノロジーを開発しました。

表情それ自体は戦うための武器ではありませんが、人類だけが獲得した「顔」の特徴のひとつです。

 

顔はさらに現実の社会関係で,人のある役割を示す面 (ペルソナ) をいうことがある。面は本人から独立した,背後の集団の権力秩序を象徴する意味をもつ

 

※それゆえに動物は顔に注目し、人類はそれ以上に顔にこだわります。

「顔」は動物や人類が誕生した時と同時に生まれ、長い進化の歴史を詰め込んだタイムカプセルです。どれだけ未来になろうと、価値観が変化しようと、ヒトがヒトである以上、顔は最重要の課題であり続けます。

 

 



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