②顔の進化(魚から原人まで)
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②顔の進化(魚から原人まで)

2018年04月19日(木)10:41 AM

(出典)
以下のサイトを大いに参考にさせていただき、アレンジしております。
より正確には原典をご覧ください。
馬場悠男、原島博
www.kahaku.go.jp


⚫魚の顔からヒトの顔まで

生きものは何も動物だけでない。しかし、顔をもつ生きものは動物に限られる。では、動物であればすべて顔をもっているのだろうか。
ふだんはあまり考えることもないかもしれないが、顔という部分は体の他の部分に比べるとずいぶん変わったところである。目、鼻、耳、口など、これほどたくさん穴の集まっている部分はほかにはない。また、これらの穴が消化や呼吸、外部からの刺激の受容(図1)と関係していることはわかっているが、どうして左右対称に配置されていなければならないのだろうか。さらに、どうして女性は、これら穴のまわりにいろんなものを塗るのだろうか。実は、これには深い、私たちの遠い祖先の時代からの生存上きわめて重要な意味があると考えられている。

図1
顔はもともとはエネルギー取り込みと外界からの刺激を調べる器官

⚫口、それは顔の源
目や耳をもたない動物はいるが、口をもたない動物はいない。どんな部品がそろっていれば顔といえるのかはわからないが、どうもこのあたりに顔の成立の秘密が隠されていそうである。
植物のように自ら太陽の光エネルギーを変換してデンプンなどの生活エネルギー源を作り出すことのできない動物は、自分の構造を維持するためにも活動するためにも、外からエネルギー源となる物質を取り込まなければならない。その取り込み口がまさに「口」といわれているところである。
 ヒトも他の動物と同様、大昔の単細胞生物に始まり、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類の進化段階を経て複雑・大型化し、現在の姿に至ったと考えられている。この進化段階のごく初期、まだ単細胞で水中に浮遊していた頃は、口の位置が体のどの部分にあっても良かったのかもしれない(図2)。

実際、水中をゆっくり移動する現生の単細胞動物であるゾウリムシは体の中ほどに口をもつ。ただ、同じく単細胞動物であるアメーバには口らしき構造はない。しかし、アメーバは体のどこに食物が触れても、そこからそれを取り込んで消化できるので、いわば体の全表面が口、といえるかもしれない。私たちの太古の祖先がどのようなタイプのものであったのかは不明であるが、生命誕生の頃の海では、生み出された単細胞生物がそれを生み出した有機物の濃厚なスープの中にどっぷりつかっていた、ということは大いにありうることである。もしそうであれば、まわりがすべて餌であるから、それほど移動しなくても、また、どこに口があっても容易に餌を取り込むことができたであろう。


しかしその後、生物個体がふえ、まわりの有機物を食い尽くし始めた頃から、餌を獲得するために仲間と競争しなければならない状況が生じた。この時、たまたま餌に最短距離で到達し即座にそれを取り込める体制をもった個体が出現すれば、それらはそうでない個体を制して早く増殖できたであろう。つまり、水中での最短距離の到達を可能にする推進装置と左右対称の外形、体の進行方向の側に位置する口、そして移動しながらより早く餌や毒や敵を感知することができる前端に配備された感覚器官、これらを備えた個体が、そうでない個体よりも多くの子孫を残すことができたであろう。おそらく、このように進化した動物の一部が脊椎動物の祖先となったものと想像される。
要するに、私たちの顔の形成は、エネルギーを取り込む口から始まり、より効率的に捕食するため、目、鼻、耳という具合に感覚器官が追加されることによってなされてきた(表1)、と考えられている。これと同時に感覚器官を統御する脳もその感覚器官のすぐそばで発達し、今日の私たちに見られるような頭もでき上がった。それで、このような進化過程全体を頭形成過程または頭化過程と呼んでいる。

口と感覚器官を進行先の側にもった個体は餌をより早く摂取できた。
さらに左右対称の外形、強力な推進装置(筋肉など)を備えたものはもっと生存が有利になった。

 


⚫頭形成と左右対称性
私たちの顔のみならず体全体の外形が左右対称形であることも、すでに触れたように頭形成(頭化)と密接に関係している。
生物の体の「前後」とは、直線的な移動運動を行うものについてのみ定義できる言葉で、もともと「前」と「後」があるわけではない。これはクラゲなど、上下は区別できても前後・左右は区別できない動物を思い浮かべればすぐにわかる。また、一般に、アメーバや放散虫、ゾウリムシなど、水中に漂う微小な単細胞生物は重力の影響をあまり受けないので、ほとんど上下の区別がない。ただ、上下・左右の区別はなくても、回転しながら進行するゾウリムシのような動物には前後の区別はある、といってよいかもしれない。


いつの時代かは不明であるが、おそらく上下の区別は体の大型化(多細胞化)によって水の粘性よりも重力の影響を強く受けるようになってから、そして、前後の区別は直線的な移動運動を行うようになって生じたと考えられる。上下・前後が区別されれば左右は必然的に決定される。もちろん、左右が決定されても、体が左右対称であるか否かは別の問題である。進行方向の右にある餌も左にある餌も同じように捕食するには左右対称の体が好都合である、という説もあるが、おそらく、それよりも水という流体の中で餌のある場所に前後・上下軸は固定したまま最短距離で到達するには左右対称の外形と左右対称的な運動が流体力学上もっとも効率がよかった、と考える方がよいのではないかと思われる。

ちなみに、上下が区別されるくらいにまで大型化した動物で、ゾウリムシのように回転しながら水中を直進する動物は知られていなさそうなので、おそらく、そのような運動様式は大型化した動物では物理的あるいは生理的に難しかったのであろう。また、体の左右対称性はゴカイやバッタなどの無脊椎動物にも認められるので、背骨があるか否かは左右対称性とは直接関係がない。最近の系統分類学的研究によれば、脊索動物(原索動物と脊椎動物)全体の祖先としては、ゴカイ・ヒルなどを含む環形動物やギボシムシなどの半索動物が有力な候補であるらしい。少なくとも現生の環形動物は一般に左右対称の外形と、進行方向の側に口と眼などの感覚器官をもつ。おそらく、私たちの体の左右対称性と顔の基礎(口と感覚器官)も、このような無脊椎動物の時代に直進的移動運動という行動様式を採用することによって同時に獲得されたものと推測される。

 


⚫顔の進化
(トカゲ)
 両生類の時代までに獲得されていた肺呼吸に加えて、爬虫類は殻のある卵を進化させ、完全な陸上生活に進出した(3億年前)。頭部に関して重要なことは、鼻腔と口腔が区別されたこと、そして頸部すなわち「くび」が出現したことである。

(イヌ)
爬虫類から進化した最初の哺乳類は、約2億2000万年前の三畳紀後期に出現した。より強力な顎をもつと同時に、機能によって大きさや形が異なる歯をもつようになった。また、嗅覚が非常に良く発達し鼻腔が大きくなると同時に、外に突出する耳、すなわち集音装置としての耳介をもつようになった。これらはイヌの顔を観察すれば理解できる。

 

⚫有蹄類の顔
ウシ、ウマ、豚など蹄をもつ哺乳類は有蹄類といわれます。
※必ずしも単純な一系の系統図ではなく、同じ目的のために、各系統が同様の進化を辿った「平行進化」です。

ウマの顔は長く、顔の長い人は馬面と言われる。しかし、なぜウマの顔が長いのだろうか。
速く走るために流線型になっているから?、それとも、草を噛むために臼歯をたくさん並べられるか?
二つとも、当たらずとも遠からず。動物の身体や顔の形は、歩いたり走ったりするために、そして食物を食うために、それぞれ独自の工夫をしている。その結果、ウマの顔は長いのである。

 

(ニホンザル)
食虫類といわれるネズミくらいの大きさの哺乳動物から霊長類すなわちサルが進化してきたと考えられている。約6000万年前。
霊長類の形態的特徴の多くは樹上生活と関係している。樹上生活の採用によって起きた最大の顔面変化は、それまで比較的側方にあった目が正中方向に移動し完全に前面に並んだことであろう。これによって立体視が完璧になった。また、枝や果実など物をつかむ能力も発達し、脳が大型化した。逆に、鼻腔は縮小し嗅覚が鈍化するとともに顎や歯も縮小した。イヌと比較すれば、これらの特徴の違いがよくわかるであろう。

(チンパンジー、類人猿)
3500万年前から類人猿が出現した。500~400万年前頃、最初の人類であるアウストラロピテクス(猿人)が出現した。
類人猿であるのチンパンジーは、四つ足で歩くニホンザルと比べてみるとその特徴がよくわかるだろう。類人猿では大脳がさらに大型化し、顎は逆に縮小している。この傾向は、完全に直立二足歩行を行い、手を自由に使うヒトになるともっと顕著になる。


⚫ゴリラからピテカントロプスへ
咀嚼器官の退化
ゴリラの顔と頭は大きい。それは食物を噛むための咀嚼筋が発達しているからである。巨大な頭の大部分は側頭筋という筋肉によって占められている。側頭筋はコメカミ(米を噛む時に動くので)の筋肉であり、頭から始まって下顎骨の筋突起(顎関節の前方の突起)に付き、下顎骨を上後方へ引っぱる。
 側頭筋は、ピテカントロプスでは文字通り側頭部にあるだけだが、ゴリラでは頭全体をおおい、それでも足りなくて、さらに頭の真ん中と後ろにT字型に組み合った骨の隆起(矢状稜と後頭稜)を作り、そこに付いている。巨大な咀嚼肉とそれを支える大柄な鉄筋によって、巨大な咀嚼力を実現している。ゴリラの側頭筋の体積は片側だけで1Lはあり、ピテカントロプスの5倍以上も大きい。
ゴリラの顔を大きく見せているのは、頬の部分の咬筋である。咬筋は、頬骨とその後方の頬骨弓の下から始まって下顎骨の下顎角(エラ)に付き、下顎骨を上前方に引っぱる。この咬筋もゴリラではピテカントロプスよりはるかに大きい。つまり、ゴリラの咀嚼筋は全体としてピテカントロプスの数倍あり、現代人の10倍以上もある。

ゴリラの口は前に出っぱっていて、犬歯が発達している。大きな犬歯は、硬い木の実を割る時にも役立つが、敵を威すときに大いに役立つ。殺すための武器ではないことは、ライオンの犬歯と比べるとわかる。ライオンの犬歯は歯根が歯冠より2倍も長く頑丈で、いかにもプロの殺し屋の道具だが、ゴリラの犬歯は歯根が小さく見かけほど頑丈ではない。
ピテカントロプスの口は現代人よりは少し出っぱっているが、犬歯がとくに大きくはない。つまり、石で木の実を割り、棍棒で敵を威すようになって、犬歯は退化したのである。


⚫2万年前の日本人
1940、50年代生まれの世代と1960、70年代生まれの若者の世代、このわずか20~30年の違いしかない世代を比べてみても、日本人の顔かたちはずいぶん違っている印象を受ける。とくに顎の形は、昔はがっしりと幅広かったものが、今は先がとがって華奢な感じに見える。大昔の日本人はどうだったのだろうか。 日本列島には少なくとも数十万年前からヒトが住んでいたが、顔がわかるようなヒトの化石はせいぜい2万年前のものしか発見されていない。それでも、そういった化石や人骨を見ると、日本人は昔から同じ顔かたちをしていたのではないことがわかる。ここでは、過去2万年前から現在まで、どのように顔の形が変化してきたのかを見てみよう。

 

⚫港川人の顔の特徴
日本列島から発見された顔のわかる最古の化石は、沖縄から出土した約1万8000年前の港川人である。その顔つきは、約1万3000年前から2300年前まで日本列島に広く分布していた縄文時代人の祖先として矛盾のないものといわれている。骨から直接特徴をとらえるのは難しいかもしれないが、現代日本人と比べると、脳を納める脳頭蓋は低く、眼球をいれる眼窩の縁の形はより横長の長方形である。頬骨は張り出し、下顎骨は幅広く頑丈で、下顎骨を動かすための筋肉が非常に強かった証拠も認められる。また、眉間は突出し、鼻梁(背)も隆起するが、鼻根はくぼんでいた。歯の噛み合わせは毛抜き状で(接端咬合)、歯槽部の退縮はほとんどない。現代人でよく発達しているオトガイ(顎の先)の突出、すなわち下顎の先端の前方突出がほんのわずかしかない。



⚫社会と男性ホルモンの低下
ホモサピエンス(人類)は類人猿やネアンデルタール人より尖った顎(オトガイ)を持っています。
歯、顎骨の進化は食生の変化を表しており、進化生物学の基本です。
人の顎が小さく尖った進化をしたことは、噛むことの力学的な力の減少というより、社会が家庭的になり男性ホルモンが減少したことによるものだとする説があります。
人の顔はネアンデルタール人より15%短くなっており、それに適合してアゴは骨の隆起となり、顔の最下部のとがったエンブレムとして残りました。
人類は8万年前にアフリカを出て、小規模な狩猟採集グループにて生活しながら全大陸へと拡散していきました。やがて小グループは互いに協力する大きなネットワークを形成していきます。特にに男性は段々とと穏やかになり、テリトリーや所有物をめぐって戦う機会が減り、協定や同盟のような関係を結び、物を交換し合うようになりました。
こうした社会の変化がテストステロン分泌レベルの低下に結び付き、それは男性の頭蓋顔面部分の変化となって現れます。



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